2008年4月26日土曜日

全米ブーム「読書会」が題材『ジェイン・オースティンの読書会』

 現在、アメリカ大流行している“読書会”。読書会とは、おいしい食事とワインなどを楽しみながら、本について語り合う会のこと。毎月一回ほどのペースで、お酒や料理をメンバーの自宅に持ち寄るホームパーティーのようなものだが、1冊ずつリーダーが決められ、前もって指定された本を読み込み、さらに自分の意見をきちんと準備していかなければいけないという厳しさもある。しかしメールや携帯小説が主流となる昨今、仲間で集まり、語り合う楽しさや本を読む喜びにハマる人が多く、海外ドラマでも日常的なカルチャーとして描かれているほど。

 そんなブームのなか、読書会を開く女性たちを描いた小説が出版され、ニューヨークタイムズの2004年フィクション・ベストセラー・リストにも掲載され、熱烈な賛辞を受けた。その小説、カレン・ジョイ・ファウラー著『ジェイン・オースティンの読書会』を映画化したのが本作だ。

 舞台は、カリフォルニア。バーナデット(キャシー・ベイカー)は離婚歴6回。「ジェイン・オースティンは人生の最大の解毒剤」と常々考える彼女が、愛犬の死を悲しむ友人のジョスリン(マリア・ベロ)を励まそうと、オースティンの読書会を企画する。ジェイン・オースティンが好きという共通点で集まったのは、結婚して20数年の夫から突然別れを告げられたシルヴィア(エイミー・ブレネマン)と、恋多きシルヴィアの娘アレグラ(マギー・グレイス)。夫と趣味が合わず、教え子にときめいているフランス語教師のプルーディー(エミリー・ブラント)、そして唯一の男性にして、オースティン初体験の青年グリッグ(ヒュー・ダンシー)。

 ひょんなことから集められた6人の男女が、1ヶ月に1冊、6冊のオースティンの長編作品について語り合うことになる。それぞれの家で、時には海辺で、おいしいワインをあけて……。

 ジェイン・オースティンは、18世紀末から19世紀にかけて活躍したイギリスの女性作家。恋愛、結婚、友情、社会的地位や礼儀をめぐる人間関係など、200年以上を経た今も全く変わらない人々の悩みを、ウィットと風刺に富んだエレガントなスタイルで描き出している。キーラ・ナイトレイ主演の『プライドと偏見』、アン・リー監督、エマ・トンプソン主演の『いつか晴れた日に』。またグウィネス・パルトロウ主演の『エマ』など、映画化された作品も多く、本国ではもちろん、アメリカでも根強い人気を誇っている。

 監督は、本作が長編映画の監督デビュー作となるロビン・スウィコード。『SAYURI』や『若草物語』など、良質な女性映画の脚本家としてすでに高く評価されている彼女。本作でもユーモアをちりばめたシニカルな会話と、思わず自分と重ねてしまう愛すべきキャラクターを作り上げた。

 「この作品には、本に逃げ場や話し相手を求める普通の人々が登場します。現代の人々が、オースティンの秩序だった世界に避難先を見出しているという設定も、私たちが日々、渋滞や携帯電話の着信音からの逃げ場を求めていることを考えれば、ちっとも不思議ではありません。オースティンの作品を愛し始めると、彼女の世界が古臭いものには思えなくなります。登場人物たちは、お金のことを心配したり、厄介な親戚に対処したり、社会的侮辱に身が縮む思いをしたり、恋におちることを夢見ていたりします。つまり、オースティン作品に登場する人々は、私たちと全く同じなのです」(監督のメッセージより)

 さまざまな問題に直面する、年齢も好みもバラバラの6人が、オースティンの作品の登場人物に自分を重ねて動揺したり、言い合いになったりしながら、それぞれの想いや、抱えている悩みを分かちあっていく。そんな姿に共感を覚える人も多いはず。また登場人物がさまざまな本が紹介するので、読書をしたくなりそう。オースティンを1度も読んだことがない人でも楽しめる、注目の話題作だ。

『ジェイン・オースティンの読書会』
監督・脚本:ロビン・スウィコード
製作総指揮 マーシャル・ローズ
原作:カレン・ジョイ・ファウラー「ジェイン・オースティンの読書会」(白水社)
出演:キャシー・ベイカー、マリア・ベロ、エミリー・ブラント、
   エイミー・ブレネマン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
http://dokushokai.jp
Bunkamura ル・シネマほかで公開中。

出典:エキサイト