2008年3月15日土曜日

伝統にモダンデザインをプラスする薩摩黒切子

伝統にモダンデザインをプラスする薩摩黒切子

上質の黒が生活を豊かにする

 黒い航空会社、黒いトイレットペーパー。最近は黒で上質感を演出した事例が注目を集めているが、今回紹介する薩摩黒切子も、これまでにない黒という色を導入し、製品にさらなる付加価値を加えた好例である。

 薩摩黒切子の元となる薩摩切子は、無色透明のガラスの上に色ガラスを約1㎜から2㎜の厚さで溶着させ表面をカットした時に美しいグラデーションが現れるガラス器だ。

 その歴史は1846年まで遡る。当時の薩摩藩藩主、島津斉興が薬品に耐えうる器の必要に迫られた折、ガラス器の開発製造を始めた事が薩摩切子のルーツとされている。

 その後、薩英戦争時にガラス工場が砲撃を受け、薩摩切子製作は途絶えてしまったが、約120年を経た1985年に当時の製法が復元されたという歴史を持つ。

 今回の薩摩黒切子に話題を戻すと、通常の薩摩切子は色被せガラスに赤や青、黄、緑といった鮮やかな色が使用されるのに対し、これまでにないモダンなデザインを追及するため黒い色被せガラスを使用したもの。

 だが、黒のガラスは他の色より遮光性が強く、薩摩切子らしい美しいグラデーションを再現するには、通常より高度なカット技術を要求する。そのため作業時間は通常の2、3倍となり、只でさえ貴重な薩摩切子の中でも特に付加価値の高い逸品として人気を集めているそうだ。

 薩摩黒切子を生産、販売する薩摩びーどろ工芸では、現在「薩摩黒切子ワイングラス」や「薩摩黒切子三煌丸タンブラー」などを発売中。いずれも完全受注生産のため発送まで約3ヶ月の時間を要するが、中には受注期間が限られた限定品もあるため、気になる人は早めに薩摩びーどろ工芸Webサイトを確認した方が良いだろう。

 ちなみに九州には黒麹の焼酎や黒酢、黒毛和牛など、黒文化と呼ばれる食材が古くより受け継がれている。

 個人的には焼酎は気取って呑む酒では無いとは思うが、新しく生まれた薩摩黒切子で黒文化を味わう時間は、きっと至福と呼ぶに相応しいはず。

 そのために、ちょっと背伸びをして素晴らしい酒器を手に入れるのは、アリだと思う。 

出典:PRONWEB Watch