2008年1月12日土曜日

サメ肉料理 目指せ宮城の名産品 官民連携課題は「臭み」

サメ肉料理 目指せ宮城の名産品 官民連携課題は「臭み」

 宮城県を代表する漁港・気仙沼港では、国内で捕れるサメ類の約9割が水揚げされている。サメ類のヒレは、高級食材「フカヒレ」の原料として高い値段で取引されるが、サメ肉は臭みが強いことから安価で取引されているのが現状だ。サメ肉を使ったおいしい料理を考案し、ヒレ以外のサメ肉の価値も上げようと、地元商店や県がサメ肉料理の開発に乗り出した。(今泉有美子)

 気仙沼市魚市場前の「海の市」1階にあるファストフード店「ウ・メネス」では、サメ肉を使ったハンバーガー「ふかバーガー」を開発し、今月から350円で販売している。ふかバーガーは、サメの切り身のフライをパンにはさみ、自家製のタルタルソースなどで味付けされている。食感は鶏肉に近いが、味は鶏肉よりも淡泊だ。

 開発した菅原幸正店長(34)は「臭みがなくて食べやすいと、滑り出しは好調」と話す。

 ふかバーガーには、サメ類の中でもより臭みが少ないとされるモウカザメの肉を使用。さらに臭みを消すため、菅原店長が開発したワインや香味野菜などを混ぜた調味料に一晩浸している。

 「現在はふかバーガーを作ることで手いっぱいだが、今後はテリヤキバーガーなどの商品も開発したい」と、菅原店長は意欲的だ。

 県気仙沼地方振興事務所によると、気仙沼港では江戸時代末期ごろから中国(清)向けにフカヒレの加工が始まり、明治15年ごろには、カマボコなどの原料として肉の部分も流通し始めた。気仙沼で水揚げされるサメ類はヨシキリザメとモウカザメが大半を占めるが、独特の弾力を持つヨシキリザメは練り製品に欠かせず、加工品の原料として需要が高いという。

 一方で、モウカザメはサメ肉を食べる習慣がある山間部などで多少の需要があるだけで、価格もヨシキリザメに比べてぐっと落ちる。同事務所の佐藤順一副所長は「ヨシキリザメに比べて臭みも少ないので、食用には向いているのだが…」と話す。

 実際に、気仙沼で水揚げされた魚類が1キロあたり300~500円で取引されるのに対し、ヨシキリザメは平成17年の平均で179円、モウカザメに至っては105円の値段しか付かなかった。

 そこで、同事務所では地元の飲食店組合などの協力を得て、約1年前からモウカザメを使った料理を開発。ふかバーガーもその中で誕生し、菅原店長が改良して商品化にこぎ着けた。佐藤副所長は「ふかバーガーは、県営宮城球場などでの販売も考えている。ゆくゆくは宮城の名産品に育ててたい」と話している。

 ただ、消費者のサメ肉に対する「くさい」というイメージは根強い。菅原店長も、「ふかバーガーを食べる前から『サメ肉はにおいがあるから』と構えてしまうお客さんもいる」と心配する。

 気仙沼市新浜町にあるすし店「大政」の店主、清水直喜さんは「サメ肉の臭みを消すのは想像以上に大変。その上、サメ肉に対するアンモニア臭のイメージは強いので、少しでもくさみが残ればお客さんは食べてくれない」と説明する。

 清水さんは、約25年前にフカヒレを丸ごとにぎりにした「フカヒレ寿司」を開発し、その後市内の他店にも紹介。気仙沼の「フカヒレ寿司」は、漫画家の東海林さだおさんのエッセーでも紹介され、気仙沼の町おこしに一役買った。清水さんは今回の開発にも協力している。

 「きちんと調理方法を研究しないと、サメ肉にはイメージ通りのくさみが付きまとう。一方で、弾力のある食感などよい点もあり、それを生かした料理を探せば、名物に生まれ変わることも可能だろう」と清水さんは話している。

 サメ肉は、人気食材へと生まれ変わることができるのか。気仙沼の挑戦は始まったばかりだ。

<サメ類の肉>
サメ類は浸透圧を調整するために、体内の組織に尿素を蓄積させている。死亡すると尿素が加水分解してアンモニアに変わるため、鮮度が落ちるほど肉はアンモニア臭が強くなる。一方で、弾力のある肉ははんぺんやカマボコなどの練り製品の原料に使われるほか、豚や鶏肉に比べて低カロリー高タンパクで、カツオと同レベルのDHA(ドコサヘキサエン酸)を含むことも分かっており、健康食品の原料としても需要が高まっている。

出典:MSN産経ニュース