ブルーノ・ロッシーニ氏は、たまたま大作曲家と同姓だが音楽には全く関係ない。イタリアソムリエ協会から評価最高点のブドウの房5つを付けられた銘酒「コルベッツォロ」の醸造家で、美食家の高位聖職者が多いバチカン市国にもワインを納入している。
先日、シエナとフィレンツェのあいだに広がるキャンティ地方のど真ん中にある有機農法を主力にした農園を訪れた。同氏はもともと北イタリアで果樹園を経営していたが、キャンティ地方に魅せられて50ヘクタールの土地を購入し約20年前からワイン醸造に乗り出した。もっとも、ブドウの作付面積には割り当てがあるためブドウ畑は15ヘクタールだけで、あとはリンゴとナシの果樹畑とオリーブ畑を除き、大部分は野生のシカが姿を現したほどの鬱蒼(うっそう)とした樫(かし)の森である。
「ワイン醸造は素人が考えるほど生易しいものではない。第1に土壌とブドウの木への研究心、第2にワインに対する広い知識と情熱が必要だ。私自身もイタリア国内はもちろんのこと、フランスやドイツのほかワインで名高い東欧諸国にも何度も足をはこんできた」
敷地内の11世紀の礼拝堂を前にした広い屋敷の応接間で、グラスに注いだ濃いルビー色のワインを眺めながら話す同氏の横顔には銘酒をつくり上げた男の誇りが輝いていた。
出典:MSN産経ニュース