560万円かけ購入年代物コレクション
品質「?」売却慎重、地下庫に
入場者数の低迷で3月末に閉館した大阪市の文化交流施設「ふれあい港館」(住之江区)の地下貯蔵庫に、157本の高級ワインが行き場のないまま保管されていることがわかった。市が565万円かけて購入した自慢のコレクションだが、「食品の安全が問われる中、品質を確認しないままでは……」(担当者)と売却には慎重な姿勢を示す。受け入れ先が見つかるメドは立たず、「1本100万円を超える銘柄もある」とされるビンテージワインが“お蔵入り”となりかねない事態になっている。
同館は、大阪・南港に78億円をかけて建設され、1995年にオープンした。大阪港と姉妹港提携を結ぶサンフランシスコ、上海、釜山、メルボルンなど海外7港の歴史や文化を紹介するため、写真パネルなどを展示していた。
海外の食文化を知ってもらおうと、オープン時から「ワインミュージアム」を併設。「シャトー・レオビル・ラス・カズ」(1868年)、「ロマネ・コンティ」(1921年)などのビンテージワインを一括購入し、地下貯蔵庫で保管・公開することにした。
ところが、ワインが温度や湿度の加減で劣化しやすいことに配慮して予約制を導入し、事実上、公開人数を限定。こうした影響もあって、年間40万人を見込んだミュージアムの入場者数は1年目から5万2000人にとどまり、2003年度には8000人にまで落ち込んだ。港館の入場者数も下がり続けたため、市はミュージアムを含めて今年3月で閉館することにした。
その後も、ワインの行き先は決まらないままで、一時保管を依頼したホテルからは「責任が持てない」と受け入れを断られた。市はオークションでの売却も視野に入れるが、「品質をどこまで保証できるか検討が必要」として、結論を出していない。閉館後も品質保持のために空調を止められず、週3回、職員が保管状況をチェックしているという。
今後の活用策について、専門家の意見は分かれる。
ワインアドバイザーの一人は「ワインは飲んでこそ価値がある。そもそも展示して関心を集めようという発想が疑問。売却して売上金を別の観光資源に充てるべき」と主張。一方、奥田徹・山梨大学准教授(ワイン学)は「お蔵入りとするのが一番もったいない。歴史的価値を重視し、醸造所やテーマパークなどに展示してはどうか」と提言する。
出典:読売新聞