2008年2月25日月曜日

ワインの需要拡大…ビール各社「第2の収益源に」と強化策

ワインの需要拡大…ビール各社「第2の収益源に」と強化策

 2005年まで減少が続いていた日本のワイン市場が回復の兆しを見せている。仏新酒「ボージョレ・ヌーボー」の消費量が頭打ちとなる一方、発泡ワインなどの人気を背景に06年以降1~2%増加し、今年も最大3%の成長が見込まれている。ワインを販売しているビール各社は、主力のビール類値上げによる売り上げ減少を補おうと需要喚起に向けたイベントの開催やニーズに即した品ぞろえ強化で、ワインを「第2の収益源」に育成する考えだ。


より身近なお酒に

 「ワインには高級イメージが強い。ワインを日常的に飲む人は国民の約6%。まだまだ、ワイン人口は増やせるはずだ」

 昨年7月にキリングループに入り、国内シェア38%(業界推計)の最大手となったメルシャン。岡部有治社長は少子高齢化の逆風の中でも、お酒を飲む機会が増えていると指摘し、ワイン事業に商機があるとみる。

 国内唯一の大手ワイン専業メーカーという自負もあり、「気軽にワインを楽しめる機会」(岡部社長)を提案する。

 3月26日に発売する国産ワイン「ウチごち」(600ミリリットル640円前後)では、それぞれ和食、イタリアン、中華料理向けをそろえる。3~4月には東京、大阪でチリ産ワイン「サンライズ」を食事と一緒に楽しめるイベントを開催するほか、5月の母の日に合わせ、仏ワイン「ピア・ドール」を特別パッケージ商品として投入する。

 業界2位(シェア26%)のサントリー、同5位(11%)のキッコーマンも08年から食と連動させたワインの消費拡大に「本腰を入れる」(キッコーマン)。3位(13%)のサッポロビールはグループのワイン専門店「ワインマーケットパーティー」(東京・恵比寿)を9日に改装オープンした際、購入前にワインを試せる有料の試飲カウンターを新設した。


健康志向に刺激も

 消費者の食の安心・安全意識が高まる中、各社が品ぞろえを強化しているのが、ワイン製造工程上で通常、雑菌の繁殖を抑える酸化防止剤(亜硫酸塩)を一切使わない「国産の無添加ワイン」だ。サッポロの調べでは07年の市場規模は前年比13%増の135万ケースで「50代以上の購入層が多い」と分析。08年も同11%増の150万ケースと2ケタ成長を見込む。

 このため、サッポロは新たに40代以下の女性層を狙った新製品「アロマルージュ」「アロマブラン」(720ミリリットル500円)を3月5日に発売し、品ぞろえを強化。飲みやすさやデザインに加え「お手軽な価格にこだわった」(海老原了・ワイン事業部長)という。

 無添加ワインも人気を集め、“パイオニア”を自負する業界4位(12%)のアサヒビールは「酸化防止剤無添加ワイン物語」(720ミリリットル502円)を2月下旬に刷新。無添加ワインは甘口が主流だが「消費者志向が多様化している」ことに着目。やや辛口の白ワインを投入し差別化を図る。サントリーは3月11日に「酸化防止剤無添加ワイン」(600ミリリットル617円)を発売し、最後発で参入。メルシャンも、07年に前年比21%増の実績を残した「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」を3月26日に一新し、対抗する。

 一方、20代を中心にした若年層から支持を集め、ワイン市場を押し上げているスパークリングワインも「引き続き伸びる」(サントリー)とみられており、各社とも欧州産や豪州産を中心に、相次いで新商品を投入する計画だ。

出典:フジサンケイ ビジネスアイ