2008年1月22日火曜日

県フラッグショップ「坐来大分」4月で開業丸2年 味と情報、おいしく発信 東京・銀座

県フラッグショップ「坐来大分」4月で開業丸2年 味と情報、おいしく発信 東京・銀座

 東京・銀座の大分県フラッグショップ「坐来(ざらい)大分」が4月、開業から丸2年を迎える。ふるさとの食材を生かした粋なメニューをフルコースで提供。都心のど真ん中で首都圏の人々の胃袋とハートをつかみ、大分ファンを広げつつある。


ふるさとファン広げる 販路拡大にも意欲

 安心院のスパークリングワインで乾杯。次々と出てくる一皿の付け合わせが面白い。いわば「脇役」である。

 前菜に登場した関さばの手まりずしには、かちエビ、縮みホウレンソウ、ニンジンが添えられていた。「アカエビを乾燥させたかちエビは宇佐の伝統食。縮みホウレンソウは県が特産化を進める新食材。ニンジンは大山の梅酒で煮てみました」。料理を運ぶスタッフのさりげない解説も、隠し味になっている。

 シャキシャキした野菜スティックにつけるみそも、ミニ竹灯籠(とうろう)の上に盛られていた。デザートは杵築産ほうじ茶プリン。ふるさとをきれいに平らげた気分になった。

 コースは7500円から。都心でも決して安くはないが、リピーター(再訪者)も増え、ディナーの1日平均売上は前年を15%上回っている。


 店名「坐来」は軍記「太平記」に出てくる言葉で「居ながらにして」という意味。「東京に居ながら大分の恵みを味わうことで、風土や人、歴史に思いはせてもらいたい」と、2006年4月、県とJR九州が共同出資して開業した。

 都内にアンテナショップを設置している都道府県は30以上。その多くが単に特産品を販売する「物産館型」だが、「坐来大分」は「食」をキーワードにした実験プロジェクトでもある。

 たとえば、レストランで使っている小鹿田(おんた)焼(日田市)の皿から「一子相伝の営み」、日田の竹箸から「竹文化」など、料理とセットで大分情報を伝えていく。食事後は、併設の物販コーナーで好みの品々を買い求めてもらい、口コミ情報が広がることで、販路拡大に結び付ける戦略を描く。

 生産者、消費者、マスコミ関係者を招いての試食会や地域フェアも定期的に開催。豊後大野の「豊のしゃも」は試食会がきっかけでホテルや都内のチェーン店での使用が決まった。


 しかし、一村一品運動でブランド化された大分の食材は少量多品種というネックもあり、首都圏での知名度はいまひとつ、流通量も少ない。

 坐来大分は都市の需要や志向を探る最前線基地でもある。自信を持って提供した地鶏に対し、鶏肉料理店から「脂がのりすぎ」との指摘を受け、生産者は成育日数を短くしての飼育に乗り出した。今後はこうした情報を基に、都市消費者向けの新商品開発、大分への移住、Uターンにも夢を広げる。

 アユのうるかを口にして「親父の気持ちが分かった」とつぶやいた来店客がいたという。

 総料理長も務める梅原陣之輔店長(38)は「幼いころ、釣り好きの父に作らされ、においが苦手で、食わず嫌いになっていたそうです。しかし、1つの料理で、50年の時を超え、親子の気持ちがつながったりする。坐来から大分の海や山が見え、生産者が見える…。そんな新たな空間づくりを進めていきたい」と話していた。

出典:西日本新聞