2008年1月12日土曜日

ヤマブドウ売り込め 新商品で消費拡大狙う

ヤマブドウ売り込め 新商品で消費拡大狙う

 岩手県は全国一のヤマブドウの産地で、主として県北で収穫される。このため、県北・沿岸振興を県政の重要課題としている県では、今後増えると見込まれる生産量に対応すべく、販路の拡大に懸命だ。(土樋靖人)

 ヤマブドウは酸味が強く、ストレートではなかなか飲めない。さらに、実が直径1~ 1.5センチであるのに対し、種子は5ミリ程度と大きい。種子は実からはがれにくく、搾る手間もかかる。以上の点から、これまで加工品としての使用は限られてきた。

 一方で、ほかの果樹に比べ、農薬散布の回数が少なくて済む(無農薬のところもある)とか、摘果・摘葉の量も少ないなど、栽培の手がかからないという長所もある。

 久慈地方ヤマブドウ振興協議会(会員数36人)の下川原重雄会長は「いまは技術も確立され、栽培もしやすくなった。手間はリンゴの半分程度」と語る。

 下川原会長は、洋野町大野でヤマブドウを約2ヘクタール栽培し、例年約20トン収穫している。リンゴ、農産加工品との3本柱で農家経営をしており、ヤマブドウは立派な収入源となっているという。


 岩手県のヤマブドウの生産量は、平成15年 159トン、16年 261トン、17年 180トン。16年の全国生産量に占める割合は実に70%。17年は53%となっている。県内の主産地は八幡平市、葛巻町、岩泉町、久慈市など。出荷額は1キロ当たり 200~ 250円。

 県では、林業技術センターが自生種からヤマブドウの系統を選抜して、「涼美紫(すずみむらさき)」を開発、15年に種苗法に基づく品種の登録をした。同時に、里山の水はけ・日当たりの良い場所への植栽を始めた。

 ヤマブドウは収穫できるようになるまで5年ほどかかるため、来年あたりから生産量がさらに増加する見通し。県では、来年、再来年の生産量を 450~ 500トンと見込んでいる。

 県が本格的に販路拡大に取り組み出したのは16年度後半。同年に生産量が急増したためだ。県内の人口は減少傾向にあり、県内需要だけに頼っては余る恐れが浮上した。

 県外メーカーに「サプリメントの材料としてどうか」「焼酎(しょうちゅう)のヤマブドウ割りはどうか」などと売り込みをしたが、量が中途半端で、味が万人受けしないなどの面から、苦戦している。

 ただ、県では「需要量は増加しているので、本庁、産地それぞれ売り込みは続ける」(流通課)としている。


 薄めて飲むジュースは約30年前から久慈市の佐幸商店、ワインは約20年前から葛巻町の第3セクター「くずまきワイン」で生産されているが、消費拡大のための商品開発も急務となってきた。

 県は11月15日の記者発表で、ヤマブドウを使った商品を紹介した。盛岡農業高校食品科学科のパン研究班が開発し、19年度日本学校農業クラブ全国大会で最優秀賞を受賞した「山葡萄天然酵母パン」や、葛巻町畜産開発公社の「山ぶどうクリームチーズ」、岩泉産業開発の「ヤマブドウ飲ゼリー」など。

 県流通課などがコンビニエンスストアチェーン「ローソン」に売り込んだ結果、11月にはリンゴとヤマブドウのジャムを使ったメロンパンやクレープロールも販売された。

 9月下旬から10月中旬にかけては、県内スーパー「ジョイス」(本社・盛岡市)が、ヤマブドウを生で販売した。関係者は「消費者にジュースやジャムを作る楽しみが伝われば」と今回の試みを歓迎している。

 下川原会長も「商品開発や販売の手助けを継続して」と県に要望している。


<ヤマブドウ>
動脈硬化を防ぐなどの効果があるとされるポリフェノール、病原菌の腸内増殖を抑えカルシウムの吸収を促進させるという有機酸、鉄分などを最も多く含有する果実として知られる。このため、「古来より『産後の肥立ちが良い』と言われ、産前から栄養補給の飲料品として妊婦にジュースが贈られている」(佐々木和延県流通課長)という。

出典:MSN産経ニュース